|
2009/06/12 21:48
一海ルキ長編小説。
※海燕は生きている設定です。(都の存在はなし)
3
第3話 「優しさと嫉妬」
「朽木さんと志波くんって仲良いよねー」
一護の耳がピクリと動いた。朽木ルキアと志波海燕の組み合わせは、一護にとってはNGだ。その言葉を聞いただけで、青筋が立つほど嫌いだ。
「でもさー、朽木さんって黒崎とじゃなかったぁ?」
「馬鹿ねー。それってただ黒崎が朽木さんにまとわりついてただけでしょー。朽木さんと志波くんは絶対両想いだってー」
一護は怒りをこらえた。何の接点もない人間にキレたって仕方がない。一護は不満げに、そして心を落ち着かせるために廊下へと出た。
「・・・・・・」
織姫は女子たちの会話と、一護が出て行った所を黙って見ていた。
「志波くん」
海燕が振り向くと、そこには栗色の髪の毛の女子生徒が立っていた。海燕の織姫へ対する第一印象は、かわいい子、というものだった。
「よう。・・・誰だ?」
「あ、同じクラスの、井上織姫です。あなたのことは聞いたことがあるんです。朽木さんと黒崎くんから。それで・・・ちょっと聞きたいことがあって・・・」
海燕は少し考えるようにしてから、織姫に向かって手招きをした。
「場所、変えよーぜ」
「えっ、でも・・・授業・・・」
「んなのサボりサボり!さ、話があるんだろ?行くぞ」
織姫は少しためらいながらも海燕のあとについていった。
「・・・で、話って何?」
海燕の横顔を見ていた織姫は、いきなり話しかけられて驚いた。
「あ、その、朽木さんのことで・・・・・・」
「朽木?」
すごく、黒崎くんに似てる人だな。織姫は素直にそう思った。性格は少し違うが、正反対というわけでもない。髪が黒いということ以外はほとんど一緒だった。
「朽木さんとその・・・・・・お付き合いしてるんですか?」
「・・・・・・」
海燕は黙ったままだった。海燕は思ったことを素直に述べる人間だ。だからこの日も、思っていることを織姫に話した。
「付き合ってねーよ。・・・ただ、俺は朽木が好きだ」
「!!」
織姫は少し驚いた。普通こういうことは隠すべきではないのか、とも思ったが、海燕がただ素直に言っただけだとわかると、話の続きを静かに聞いた。
「黒崎もたぶん、好きだろうな。けど、朽木は俺がもらう。俺は朽木のことが、昔から大好きなんだよ」
「昔から・・・」
「さ、このくらいでいいだろ?オメーも他人の俺の昔話なんて聞きたくもねぇだろ」
そう言って海燕は立ち上がった。しかし織姫は、聞きたかった。もっといろいろなことを知り、少しでも一護に近づきたかった。立ち上がった海燕の腕をつかみ、いう。
「お願いです。・・・・・・聞かせてください」
「!」
海燕は織姫の顔をじっと見つめた。
そう、それは、5年前に起こったことだった。
俺と朽木が残業で残り、帰りの遅い隊士たちを迎えに行ってみたら、すでに虚に食い殺されていた。
俺と朽木は責任をとり、離れ離れになった。
お互い修行し、罪をぬぐおうと毎日のように訓練をした。
『朽木・・・お前に会いたい』
『海燕』
『なんスか、隊長』
『現世へ・・・行ってみないか?』
『!!』
『そこには朽木と・・・面白いやつがいる』
『面白いやつ・・・?だれなんすか?』
『行けば分かる。お前ももう、充分に修行しただろう。・・・朽木に会ってやれ』
『はいっ!』
「俺は、そうしてここに来たってわけ。・・・まさかその面白いやつが、黒崎だったとはな」
織姫は黙って海燕の話を聞いていたが、海燕の切なさがよく伝わってきた。海燕は織姫の視線に気づくと、気まずそうに言った。
「・・・お前も黒崎のこと好きそうだなぁ」
「えっ!その・・・あの・・・っ」
織姫は顔を真っ赤にしながら俯いた。そんなことは気にせず、もう一度、海燕は言った。
「俺は、朽木が好きだ」
「・・・・・・」
ドキン、ドキン。
聞き間違い、ではない。
確かにあの人は、そういった。
ルキアはすぐ近くの木の上にいた。心臓が飛び出て、木から落ちてしまいそうなくらいに、苦しくて、切なかった。
今がまだあの頃だったなら。
飛び出して行って。
私もですと赤くなりながら伝えて。
海燕殿の手を握るのに。
『俺は、朽木が好きだ』
ああ、あなたは。
あなたは一途すぎる。
私のことなど忘れて。
新しい好意をもつものを持ち。
わたしを心の中から消して、その方と歩んでいけばよかったのに。
ああ、本当は私は、嬉しいのだ。
嬉しくないのに、嬉しいのだ。
・・・・・・好きではないのに、好きなのだ。
まだ、忘れられないのだ。
「じゃあな、織姫」
海燕は親しみを込めてそう呼んだ。それが織姫には、一護が言ったようにも見えて。・・・本当に言ってくれたら、どれだけ嬉しいのだろう。竜貴にも、・・・ルキアでも呼ばれる、下の名前で。
「はい・・・。頑張ってくださいね」
頑張ってくださいね
ああ、私はなんて醜いんだろう。頑張る?誰のために?私のために。
朽木さんと志波くんが付き合えば、黒崎くんが振り向いてくれるとでも思ってるの・・・?
ううん、きっと。
黒崎くんは以前にも増して朽木さんへの思いを募らせるだけ。わかるの。
織姫は海燕の後ろ姿をずっと見守った。・・・一護の面影を求めて。
「好きだ」
一護から突然、そう言われた。
「冗談はよせ」
私が言えたことと言えば、それくらいだった。
「俺は本気だ」
「なぜ、いきなりそのようなことを」
一護は答えた。
海 燕 に お 前 を 取 ら れ る よ う な 気 が し た か ら
馬鹿者。
いつもならそう言い、怒鳴りつけるはず。今はそれが出来ぬ。
「・・・・・・その気持ちには、答えられない」
「・・・海燕か?」
「違う・・・」
「海燕が好きだからか?」
「違う・・・っ」
「海燕に告白されたからか?」
「告白など、されておらぬ・・・」
一護は悲痛な目で私を見た。
「じゃあ・・・なんで・・・」
「お前を恋愛対象として見ることなど出来ぬ」
それが答えだった。
ポッ・・・ポツ・・・。
涙・・・?いや、雨?
ザー・・・ザー・・・。
「ルキア、俺は・・・」
一護が何か言いかけた。
ザ
ア
ア
ア
「俺はア!!」
ア
ア
ア
一護の声は、雨の音によって消された。
〜続く〜
|